堀井憲一郎 著作

堀井憲一郎本人による著作の解説

ボーっとディズニーランド行ってんじゃねーよ 双葉社 2019/06/02

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 ディズニー本。

 ディズニーランド&シーのアトラクションの原作はどういう話かを紹介した本。

 サブタイトルは「ディズニーアトラクション34 本当の物語」。そこまで入れるとかなり長いタイトルになる。

 出したのは双葉社

 私が昭和の終わりころにライターを始めたとき、双葉社とはずっと仕事をしていた。最初から5冊の本はすべて双葉社から出している。

 ひさしぶりに行ってみると、30年前には新人編集だった人が役員になってたりして、驚くと同時にちょっと笑ってしまった。なんか、社会そのもののに対して笑っちゃうというのか、へー、あの人が社長で、あやつが専務で、あいつが常務だってか、でははははという感じで、まあ、笑うところではないけど、人生の妙味に触れるというかね、そういう笑いです。あいつが社長では変だとかそういう意味ではない。しらぬうちに刻がすぎることへの笑いっていうかね。そういうやつ。

 

 ディズニー本はずっと新潮社から出していたけれど、あらためて別のところから出してみようかというところで双葉社から出した。どうでもいいことながら、新潮社から双葉社って、歩いて10分少々くらいの距離ですな。近い。

 

 世の中には、さほどディズニー映画を見ておらずに「ディズニーランド&シー」へ行く人がいるものである。誰かに誘われて行く人たちが多い。でなきゃ、あんなに混まない。そういう人たちに向けて書いたものである。

 ただまあ、ディズニーの本って、ディズニー大好きな人が読むからねえ。そういう人たちにとっては、たとえば「アナと雪の女王」や「美女と野獣」の世界もお話も周知のことだから、それを話されても困るのかもしれない。そういう人たちにとっても、新しい視点に気付くように書いたつもりなんだけど、どこまで気が付いてもらえるのかはわからない。

 

 原作の存在するすべてのアトラクションを紹介したので、そうそう、知られていない原作も触れている。

 とくに、スプラッシュ・マウンテンの原作である「南部の唄」は平成時代最初のころはレンタルビデオが存在していたけれど、途中から製造中止となって、いまは見られない作品である。だけどスプラッシュマウンテンは人気だ。そのバックボーンについて、そこに出てくるウサギどんとキツネどんについて、私は現場でもう何十回と同行者に説明してきた。たぶん30回ではきかないくらいだろう。それを書いた。

 また、シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジについては、原作映画が存在しない。このアトラクションの原作は、大昔の説話「千夜一夜物語」である。古代の説話だ。日本でいえば奈良時代とか平安時代あたり。その時代の話である。

 そこにシンドバッドの冒険の原話があり、それを読んで、紹介した。

 読まれてみるといいが、かなり読みにくい話である。まあ古代の外国の説話だから、その世界観がよくわからないのだ。シンドバッドの7つの冒険について書いてあるが、どれも異様である。ディズニーシーではその世界をアトラクションにしていて、あのアトラクションだけはたしかに特異だとおもう。そのバックボーンを紹介している。千夜一夜物語を読んでからあれに乗ると、ちょっと世界が違って見えてとても面白いんだけど、そういう人はけっこう少数派だとおもう。

 そういう細かい部分にいろいろと触れた。

 あと「スターウォーズ」シリーズや「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズなど、見てない人にとっていまさら全編を見るのにはかなり勇気がいるものについて、全編をざっくり説明している。本気で説明すると、それだけで本1冊になってしまいそうなので、ざっくりだけど。

 

 ディズニーアニメも多くは、童話などに原典がある。

「白雪姫」も「シンデレラ」も「リトルマーメイド」「美女と野獣」「アナと雪の女王」などには原典があって、それらはすべて見事にアメリカに都合のいいように改変されている。もとは、その原典とアニメの差異についても書いていたんだけど、そこに踏み込むと、「アニメとアトラクションの関係」とは関係なくなってしまうので、残念ながら割愛した。うーん。残念。まあでもそこの考察は、あまりディズニーアトラクションを楽しむ考察にはならないからねえ。

「白雪姫」「シンデレラ」などの原話の最後は、かなり残虐なんだけど、そのへんはウオルト・ディズニーは素知らぬ顔をしてスルーしてますからねえ。

 まあ、そういう本です。

 

 全文をですます調で書いた。あまり慣れない文体である。

 自分で、自分の文体は「ときどきわざと調子をくずすこと」によって前に進んでいるのだな、と気付いてしまう。

 タイトルは、もともと担当編集のサラシナさん、および役員ピノリーと話をしてるときに「ぼんやり行ってる人に読んで欲しいんだよな」という話をしていて、そういう方向にしますか、というところで決まって、べつだんテレビ番組に寄せて考えていたわけではない。でも、さらに話してるうちに「ボーッとディズニーランドに行ってるんじゃないよってことですよ」と私がどこかで言ったらしく、それでいきましょうか、ということになったのである。まあちょっと気恥ずかしいタイトルではある。